♪「音楽力」を身につける♪

少し硬いテーマになってしまいますが、最近、春の新規入会や体験レッスンなど多くさせて頂いている中で、「音楽力」について感じる事がありましたので、書かせて頂きます。

春先は、ピアノを初めて習う方や初心者の方がお越し頂く事が多いのですが、それ以外にもピアノ経験者、他のピアノ教室や音楽教室で習われていたという方もいらっしゃいます。

その様なピアノ経験者の方には、体験レッスンでピアノを弾いて頂くのですが、その演奏を聴かせてもらっていると、前の先生がどの様に教えられていたのか何となく分かるのです。例えば、いつもニコニコ笑顔で弾いている子は・・・きっと前向きな言葉かけの上手な先生。スラスラ音符読みの早い子は・・・読譜力をしっかりつける事を念頭におかれてる先生。指がスルスル速く動く子は・・・テクニックの大切さをしっかり伝えられている先生。

なるほどなるほど・・・と勉強させてもらう反面、うーん、これはもったいないなぁ、かわいそうだなぁと思う事もあります。特に感じるそれは、ピアノを弾く「指のタッチ」です。<ピアノを弾く>という事は、色々な能力が必要になるという事はこのホームページの始めに書かせて頂いていますが、「指のタッチ」=ピアノ鍵盤の打鍵の仕方・・・ほど一度ついてしまった癖を直すことが難しいものはありません。最近の傾向として、電子ピアノの影響もあるのかもしれませんが、指の形(昔は卵の形なんて言われましたが*今は鍵盤を少し這う様な・・私は大きいシュークリームの形と言っています)はいいのですが、鍵盤の深さやピアノの弦の長さを理解して弾いていない子が多い気がします。タッチの事を文章で書くのは難しいのですが、例えばショパンの短い軽いワルツは弾けても、深いffの必要なベートーヴェンの悲愴のソナタの1楽章のような曲は弾けない・・と言えばよいでしょうか??

もちろん、タッチだけできれば良いという事ではありません、テクニックや読譜力・・・諸々が必要なのは前述の通りです。しかし、初心者の頃から浅くて軽い(ピアノの弦が充分に響いていない)タッチで弾き続けていたものを、突然上級者になってベートーヴェンの悲愴を弾くからといって、タッチを変える事はかなり難しい事です。

そしてもう一つ、タッチと共に大事な事は、1つの曲を大切に仕上げる事。これはタッチの浅い子にみられる傾向なのですが、タッチが浅いものしかできないために、アーテイキュレーション(強弱や曲想)の表現の幅が狭く、無味乾燥の演奏になってしまう事。どんなに気持ちを盛り上げようとしても、タッチが邪魔をして盛り上げられなくなってしまう、はたまたミスタッチをしても自分で気づかずに練習する事も忘れてすすんでしまう・・・本当にもったいない事です。

1つの曲を作るのに、作曲家は沢山のエネルギーを注いでいます。中には命まで削って書いていた作曲家もいるほどです。私達演奏者は、その作曲家の作った貴重な曲を読み解き、その曲の魅力を感じ、私達の心でその魅力を共鳴させて、弾くべきだと思うのです。

長くて硬い話になってしまいましたが、「音楽力」といっても色々あり、その基本的な力は、上級者で突然身に付くものでなく、ピアノを始めたばかりの初心者のころからコツコツと積み重ねていくものなのだ・・・ということ事を、あらためて深く痛感し、ピアノを教える者として責任を感じる今日この頃です。